『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』
監督は「卒業」「クローサー」のマイク・ニコルズ
出演 : トム・ハンクス 、 ジュリア・ロバーツ 、 フィリップ・シーモア・ホフマン 、 エイミー・アダムス
ストーリー
チャーリー( トム・ハンクス) は、“チャーリーズ・エンジェル”と呼ばれる美人秘書たちを従え、酒と女が好きな下院議員です。彼は特に理想は語りませんが、どんな状況でも陽気に振舞い、人から好かれ、できないことはむできないと言い、要所では常識的な判断をする人物です。その彼に、テキサスの富豪で反共産主義者のジョアン(ジュリア・ロバーツ)が目をつけ、アフガニスタンを救うよう彼に訴えたのです。チャーリーはジョアンと肉体関係を持ち、アフガンやパキスタンに飛び、議会を丸め込み、アフガン支援に乗り出します…。1997年に政界を引退した、下院議員チャーリー・ウィルソンの伝記を基にした映画です。
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【評価】
本当の大人の映画だと思う。女性向ではないかもね。チャーリー( トム・ハンクス)もジョアン(ジュリア・ロバーツ)もリアリテイがあってすごくいい。彼らはヒーローというより俗物に描かれています。この映画の一番の魅力はリアリテイです。
ジョアンの開くパーティの様子、議員と地元支持者との関係、保守派の議員や支持者の考え方、予算の取り方、議員間の貸し借り・スキャンダルへの対応・・・またソ連の攻撃ヘリの場面などの例えばヘリから撃ち出される機関砲の光の帯やヘリのパイロットの会話なども映画には珍しくリアリティがありました。こういう細かいところがきちんとしています。
イスラムの敵のイスラエルからソ連製武器をアフガンに送り込む交渉や、パキスタンの大統領もリアルでしたね。面白かったのは、ジョアンがパキスタンの大統領歓迎パーティのスピーチで冒頭に「大統領はブットを殺してない・・・」と発言した時です。さすがのチャーリーもびっくりしてウイスキーを噴き出しそうになりました。(チャーリーがウイスキーを飲むシーンが多いですね) この映画にユーモアがあるのは、原作で、チャーリー自身にユーモアがあるからで、その元はチャーリーが自分を客観視しているからただと思います。
でもこの映画はコメディではなく、リアリテイとちょとしたユーモアを楽しむ大人の映画です。実話を基にというより実話そのものを重視したために、地味になっているし痛快さも減っています。現実はそんな痛快なことばかりじゃないですからね。こういう意味では映画としての娯楽性は少なくなっています。
ただ、それを老練な監督が上手に描いています。現実の世界は複雑なので、おもしろいエピソードを選び、登場人物をしぼり、状況を会話で説明させています。でも、映画としての見せ場はないのですね。それに現実の世界ですから結末もあいまいです。
フィリップ・シーモア・ホフマンはふてぶてしい態度の変わり者で、盗聴が趣味のデブのCIA職員を演じていました。また、エイミー・アダムスはテキパキして若く可愛い、チャーリーの第一秘書を好演していました。この2人は本物にどの程度近いのかな?
余談ですが、現場を知ることが大事。ジョアンも何回もパキスタンに行っているし、ジョアンもチャーリーをまずパキスタンの難民キャンプに行かせます。チャーリーも予算が危なくなった時に下院の予算委員長をパキスタンの難民キャンプに案内しています。決断するとか説得するとかの場合は現場を知っていることが大事です。
また、これも余談ですが、国の政治家には軍事知識か軍事的センスが必要です。政治と軍事は一体なのですね。(そうでないのは日本の政治家だけです。今まで日米安保で守られてきたからですね)
「ヘリを落とせるのか?」というチャーリーの言葉はアフガン戦のポイントをついています。
アフガンの戦いでは攻撃用ヘリがポイントです。ヘリの効用は実際にヘリで山岳地帯を飛んでみればわかります。もちろん普通の銃器で攻撃用ヘリを撃ち落すことはできません。ランボーは弓矢でソ連の攻撃ヘリを撃墜しましたが、現実には絶対に不可能です。このように技術力に差がある場合には、戦争は一方的な虐殺になってしまいます。
ただ、スティンガーという携行用地対空ミサイルがあればヘリ撃墜できます。しかも、これを撃つとヘリを自動追尾します。スティンガーをアフガンゲリラに供与したので、ソ連軍のヘリを攻撃できたのです。ヘリのパイロットには気の毒ですがね。でもこれがソ連軍の撤退につながり、歴史を変えました。地球の歴史は戦争で変わり、戦争はちょっとした武器の有無で全く様相が変わることがあります。
この映画に対する批評があまりにも悪いので、つい長く語りました。特に批評家とかニューズウィークなんかは決して誉めない映画でしょうね。